寒さもゆるみ、日差しも柔らかく春を感じさせる日。
新緑もそろそろ芽吹き、フォトジェニックな写真が撮影できるのではないかと浮足立ち、稲沢市の中でも比較的地味な(あまり話題にならない)スポット、「赤染衛門歌碑公園」に行ってきました。
赤染衛門(天暦10年(956年)頃? – 長久2年(1041年)以後)は、平安時代中期の女流歌人として、和泉式部と並び称され、中古三十六歌仙・女房三十六歌仙の一人として有名。大江匡衡(おおえのまさひら)と結婚し、2度にわたる夫の尾張赴任に同行した、稲沢市にゆかりがある歌人。
彼女が衣をかけたといわれる松がある、赤染衛門歌碑公園は、看板こそ鮮やかなピンク色をしているものの、謙虚な趣でひっそりとたたずみ、まちを散策しているだけでは通り過ぎてしまうような印象すらあります。
公園内は広いわけではなく、散歩を楽しむというよりは、ベンチに腰掛け、穏やかな陽の中で会話を楽しむ。そんな春の陽気によく合う雰囲気をたたえおり、歌碑はそんな公園の奥に置かれていました。
高校生の時、学校終わりに近くの公園で、好きな女の子と話をしているだけで時間が勝手に過ぎていってしまった当時を思い起こさせるような風景。
赤染衛門や、夫である大江匡衡について書かれた石碑の奥には、赤染衛門が衣をかけたという松。
歴史に残るような逸話を生んだ場所が、やがて公園となり、地域に愛され、思春期の学生のささやかな思い出を新たに作っていく。こうした「場所が残されている」ことも、文化の伝承ではないのかと考えさせられました。
ふと、目を後ろの桜の木にやると、春の訪れが。
なんだか優しい気持ちにさせられる時間がゆったりと流れていました。
【赤染衛門歌碑公園】
愛知県稲沢市松下1丁目17−27
コウケツ トモヒデ
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